水商売も経験したことがあるという小倉さんが、なぜ鳶を続けているのか。他の仕事にはないこの仕事の魅力とは? まだ10カ月になったばかりという愛娘がかわいくて仕方がないという小倉さんに聞いた。
「若いウチはいろいろやってみようと思っていましたから」という小倉さんは、型枠大工もやったし、水商売の世界で働いたこともあったそう。その後はまた型枠大工や鳶の派遣の仕事を経験。そこで誘われて現在の会社へ入社した。いくつかの仕事を体験した彼にとって、鳶はどんな仕事として映るのだろうか。
「この仕事は日曜日がきちんと休めるなど、メリハリがあります。水商売の時は曜日感覚がなかったし、昼夜逆転の生活で、一日寝て終わってしまった、なんてこともありました」
鳶になってからは、例え休みの日でも朝は必ず7時には起きて、家族と遊びに行くなどオンオフともに充実させるよう心がけている。特にプライベートの時間をきちんと取れることは、今の小倉さんにとってはとても大切なことだ。
「娘がまだ10カ月なのですが、最近は家に帰るとハイハイして来て『パパ』と呼んでくれるようになって」
そんなふうに、愛娘とのやりとりを破顔で説明してくれる小倉さんの様子からも、毎日夜になれば家に帰れること、休日は家族と過ごせることがいかに大切なことなのか、よく伝わる。もちろん鳶の仕事はきつい。
「毎年夏になると辞めたくなります(笑)。そう思いながら、がむしゃらに働いているうちにいつも夏が終わってしまう感じ」
それでも、型枠大工ではなく鳶をやり続けているのは、やはり給料の良さが大きいようだ。
「ビックスクーターに乗っているんですけど、結構いじっていて。バイク雑誌にも何度か載ったことがあるんですよ」
周りはクルマにお金をかける人が多いそうだが、自分はバイクなんです、と小倉さん。さらにこうも続ける。
「それと、やっぱり家族ですね。家族ができてからは、目標も変わりましたから」
大切な家族を養っていくんだという気持ちが、ツラい夏を乗り越えさせている。今年も夏が間もなくやってくるが、仕事中に愛娘の顔を思い出せば、小倉さんのギアはグッと切り替わるに違いない。
友達にも鳶の事を教える。