鳶のキャリアが10年に達しベテランの域になりつつある。まだ26歳ながらも、すでに“職人”としての風格を感じさせる伊藤さんの鳶人生を振り返ろう。
足場の組立て等作業主任者の資格を取得し、現在は親方として活躍する伊藤さん。16歳のときから足場鳶に就いている彼がこの世界に入ったきかっけは給与条件の良さだった。
「学校を辞め、友達とともに『とりあえず働こう』と求人広告を見たとき、一番給与の条件が良かったのがこの仕事だったんです」
10代の男性(女性もだろうが)からすると、当然のような理由で鳶の世界に飛び込んだ伊藤さんだったが、高いところで作業する仕事に格好良さを感じていたことも理由のひとつであったようだ。
入った当初はやはり辛いことが多かったという。
「夏場の暑さはもちろん、入ったころは体力的に辛かったことを憶えています」
しかし、伊藤さんは体力的な辛さを1週間で克服する。それは一緒にこの仕事を始めた友人の存在が大きかった。
「友達に負けたくないと、意地になって仕事に取り組みました。当時は仕事がキツかったのであっという間に時間が経っていましたね。その甲斐があったのか体力的には1週間で慣れました」
とはいえ、多くの鳶と同じように夏場の暑さだけはいまでも慣れないと話す。
「一度、夏場の暑さからなのか身体が激しくつったことがありました。その経験から暑い時期は1~2時間作業し、そして休みを入れることを繰り返しながら足場を組み上げています」
夏の暑さに比べたら、動かないとき体力を奪われる冬場や雨天時の作業も苦にならないと話す伊藤さんだが、実は鳶という仕事において大きくマイナスになることをいまだに克服できてないそうだ。
「昔から高いところが苦手なんですよ(苦笑)。どれだけ足場を組んでも慣れません…」
苦手とはいえ、高いところでの作業が当たり前の仕事である。今まで30m以上ある足場を組んだこともあったが、苦手かどうかは仕事中には考えないようにしていると話す。
「とにかく下を見ないで仕事に集中するしかないですね。高いところが苦手でも手を動かさないと仕事が終わりませんから…」
友達にも鳶の事を教える。