「日本に建造物があればあるだけ、親方の数だけ足場がある」
新人鳶職人として、さまざまな現場に足を踏み入れ、さまざまな親方との出会いがあった。
自分の腕を磨くために、少しでも親方たちの技術を盗もうと話を聞くが、どの親方もみんな最後に同じ言葉を残す。
「自分なりのやり方を見つけていくのが、小方の楽しさじゃないだろうか」
第二回目の今回は、群馬県のとある場所、食品系工場内にあるタンクの内部に設置されたくさび式の足場。
タンク内の攪拌機を整備するために使用する足場だそうだ。
写真で見る限り少し地味な風景ではあるが、注目すべきはその現場のルールだ。
まず驚かされたのは、現場までの移動ルートである。
トラックと足場架設現場は、100mにも満たない距離であるが、食品を取り扱う工場ということもあり、移動ルートで厳しいルールを守らなければならない。
そして、工場敷地内を移動するために、一人三足の靴を用意しなければならなかった。
一足目は屋外を移動するために、二足目は工場内を移動するために、そして三足目は架設現場がある製造室内を移動するために使うのだ。
それぞれ履き替える場所も決められており、靴を履き替えたら隣接するエアーシャワールームを通りゴミを落とす。
もちろんだが、服装も泥だらけの作業着を出来る限り避け、頭にはビニールの衛生帽を着用しなければならない。
このような厳しいルールの下で資材を搬入するので、本来なら数十メートルで済む運搬が、数百メートルも工場内をグルグルと迂回しなければならず、かなり骨が折れる作業であった。
きつい搬入作業の後に待ち受けてたのは、これまた骨が折れる足場組み立て作業であった。
この一文を読んで、「いつものことじゃないか」とお思いかもしれないが、普段行う作業とはまた違う意味で苦労したのである・・・
足場は必ずしも建物の外に架設するとは限りません。時には今回の現場のように、建物の内部に足場を組まなければならないこともあります。そしてたいていの場合、建物内部での足場工事には面倒なルールがついてくるんですよね・・・笑
さて、いよいよ足場組立に取り掛かろうとする鳶人記者M君。そんな彼の前に現れた、思いもよらぬ「障害」とは!?後編にご期待ください!
友達にも鳶の事を教える。