いまも心に残る先輩鳶に言われた台詞

格好良さやお金を稼ぎたいという思いから鳶の世界に入りながらも、仕事の厳しさから離職する人も少なくない。鳶としてのキャリアを積むきっかけが人それぞれにあるようだ。

足場とは建設現場において絶対に欠かせないものである。現場の状況により組み立てに必要な資材の数をよみ、足場を組むだけでなく解体・撤収をも考えながら作業を行うのだ。当然、作業の手順を考えるには、それなりの経験が必要となる。鳶という仕事を続けていくのは簡単ではない。

「鳶を始めたころはがむしゃらに作業を行っていたぶん体力的なキツさや、暑さ寒さの辛さをとくに感じていました」

今年で鳶歴8年となった下國さんはこの仕事に就いた当時のことをこう振り返る。鳶は体力的な負担が大きい仕事だが、仕事をこなしていけば必要な身体は自然と作られていくもの。なによりこの仕事を続けるために必要なのは我慢強さだろう。

実際、下國さんも「最初はついていくのが大変で帰ったらすぐ寝ないと体が持ちませんでした。でも半年くらい経つと自然に慣れましたね」と、語っている。

しかし、仕事の段取りを理解しないまま作業したり、先輩鳶の要求にすぐ対応できないと怒られ続けることは間違いない。

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必要なのは、毎日作業現場で怒られたとしても、それに耐える精神力。そして教えられたことだけでなく自らが考える姿勢、親方や先輩鳶の仕事や技を盗みながら作業を憶えてく気持ちがないと成長しないのだ。逆に、淡々と仕事をこなすだけではなぜ自分が怒られたかを理解できずに、この世界から去っていく可能性が高い。

いまやベテランの域に入ろうとしている下國さんも若い頃、ある先輩鳶に注意されたひと言が、一人前の鳶になるきっかけになったという。

「鳶になって最初の頃、言われたことをやりつつ一日が終わればいいとダラダラ作業をやっていました。そこで『(ちゃんと作業を)やんなきゃあ(仕事が)終わらないぞ!』と言われたことをいまだに憶えています。単純な一言なのですが、言葉以上の重みがありました」

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その後、どうせやるならと積極的に仕事を憶え、数多くの仕事をこなしていった下國さんは、将来独立することを念頭におきながらいまでは後輩鳶の指導にも精を出す。

相手の性格を見極めつつ注意の仕方を変えているという下國さんが、ダラダラ働く新人鳶にまずいう言葉はもちろん『やんなきゃあ終わらないぞ!』だ。

インタビュー後編へ続く・・・

友達にも鳶の事を教える。

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