どんな環境であっても安全に架設することを求められるのが足場。マンションや住宅ではない箇所での作業も珍しくない。
(インタビュー前半はこちら→『親方に求められる資質とは』)
意外だと思われるかもしれないが、日々、いろいろな現場で作業する鳶が、過去に組んだ足場を覚えているケースは少ない。
それでもなかには忘れられない現場もある。
「(千葉県)柏のショッピングモールで行われた増築工事は印象に残っていますね。足場を組んでバラして、だいたい1年くらいかかった規模の大きさもそうですが、親方として初めて行った大規模現場だったことがいまでも忘れられない理由なのでしょう」
2年前の現場についてこう振り返った平尾化建の岩間さん。
この他、メガソーラーのパネルを支える架台に単管で組んだ足場など、住宅やマンションとは形状が違うため時間がかかったことはいまでも憶えている。
足場を架設する場所はさまざま。どれだけ難しい場所でも鳶が足場を架設しないと建設作業が成り立たない。
足場は用途や仕様が決まっていない分、組む鳶によって多種多様に仕上がる。足場の詳細な設計図があるわけでもないので、現場ではとまどう若手も多い。
「働き始めた当初、いろいろな親方について現場に行きましたが、親方ごとに作業方法が違うんですよね。昨日はこうだったからと作業を進めると『違う!』と怒られたり(苦笑)。いまでこそ親方によって組み方には味が出るとわかりましたが、当時は納得いかなかったですよ(笑)」
現在、岩間さんは住宅ではなく石油タンクなどのプラント系や工場で足場を組む事が主だという。規模が大きいため足場の架設にかかる期間は3週間~2ヵ月にも及ぶことも珍しくない。大きな現場は作業の流れが組みやすく、小さな現場より体力を調整しやすいそうだ。
「初めて現場を任されたとき、時間はかかるし、組んだ足場はガタガタで最後に資材が繋がらないほどひどい出来でした。恥ずかしかったですね。以来、現場の環境、規模、工期に関わらず、どうすれば美しく組めるか、どういう流れにすれば早く組めるかを考え続けています。ただ、結論はでないでしょうね。鳶の性分で、常に上を目指していくでしょうから」
友達にも鳶の事を教える。