やってきました毎回好評な「中村名人のもっと鳶道具シリーズ」!!
3回目になる今回は、クリッパーについてお伝えします
クリッパーってどんな道具?
ハサミのような?ペンチのような形のクリッパー、日常生活であまり見かけない道具ですね。これは何に使うものですか?
中村「クリッパーは、番線を切るための道具です。他に「帯鉄(おびてつ)」という、荷をを結束して締めるのに使われる金属製バンドをカットする時にも使われます。
クリッパーには、200、250、300と、色々なサイズがあるんですよ。使う目的によって、サイズ違いのものをいくつか持っていくこともあります。」
番線というのは、単管足場の補強などでよく使われてる太いワイヤーですね。これを切るには、普通のペンチでは歯が立たないんですね。
中村「そうですね。ところで「クリッパー」という呼び名ですが、これ、関東と関西でも、ちょっと違いがあるんですよ。」
同じ道具なのに、地域で名前が違う!?
中村「番線を切るモノを『クリッパー』と呼ぶのは、西の地方に多いですね。関西ではクリッパーと言うと、大きめなものを指してることが多いです。
関東で『クリッパー』と呼ばれているのは、関西で言うところの『ハンドクリッパー』の方になります。こっちはちょっと小さめサイズのもの。関西で言うクリッパーのことを関東だと、『デカクリ」「大きいクリッ パー」と呼ばれたりするそうです。」
なるほど!ところ変われば品変わる、でしょうか。同じ呼び名でも、地域によってモノは変わってしまうことがあるんですね。ワタリや遠征で広範囲に活躍する職人は、覚えておくといいかも!
クリッパーを長持ちさせるためにやってはいけない「あのこと」とは!?
クリッパーを長持ちさせるために、「やってはいけない事」ってありますか?
中村「釘抜きですね。クリッパー を釘抜きの代わりに使って、刃に釘を挟んでしまうと刃が早く傷むため寿命が縮んでしまうんです。安い工具ではないですから、やったら絶対ダメですね。
僕はミニバールをいつも持ち歩いていて、釘はそれで抜きます。モンキーレンチを使っても釘は抜けますから、クリッパーを釘抜き代わりに使ってしまうのは、絶対やったらダメですね。」
釘抜きをすると、クリッパーはどうなってしまうんですか?
中村「クリッパーで一番大切なのはワイヤーを切る刃先なんですが、釘抜きをすることで、ここが欠けてしまったり、刃がガタついて、ブレが出たりするんです。
刃先を痛めてしまうと、基本的には買い換えるしかありません。少し技術があれば、調整しながら使うこともできますが、それでも寿命は短くなります。
刃を痛めてしまったクリッパーの修理ってできないんですか?
中村「農機具屋さんなどで、有料で研いでくれるところもあるかもしれないですけど、基本的には治せないと思った方がいいですね。無理すると、研ぎすぎたり、正しい形に刃を立てられないことが多いです。
サンダーでは研げないから、グラインダーが使えないと難しいので、アマチュアは手を出さないほうがいいでしょう。
それから、本当に大切なクリッパーは、人に貸したらダメですね。戻ってきたら切れ味が落ちてたらがっかりしたりするし、仲間内だと「弁償して!」とは言いづらいですから。貸さないことが一番の予防です。」
自分に合ったクリッパー の選び方のコツ
上手に使ったとして、クリッパーの寿命ってどのくらいなんですか?
中村「だいたい、2~3年保ったら、長持ちした方だと言われています。刃が痛んでガタが来ていると、閉じた状態で光にすかしてみた時、細く糸のような隙間ができてきます。こうなると、そろそろ交換の時期ですね。
選ぶときのコツは、まずは重さ。取っ手の部分の材料がアルミのものと、鉄のものがあります。
安くてもいいなら鉄のものでもいいですが、アルミの方が、軽くて疲れが違う。アルミ製ハンドルの方が、ハンドル長さもいろいろあるので選択肢が多いです。
持ってみて、自分にフィットするものを選ぶといいですね。」
クリッパーは、足場職人にとって縁の下の力持ち的な存在の工具です。あまり目立つ存在ではないが、ないと困るというような相棒の一つ。
中村工房では、持ちやすくハンドルを加工したクリッパーを受注製作しています。今から一本選びたい人は参考にしてみることもおすすめです。
友達にも鳶の事を教える。