「日本に鳶はたくさんいるが、一番はうちの鳶だ」
鳶職を束ねる社長たちはみな誇らしげに言う。
だったら一番の鳶を決めようじゃないか--
鳶-1グランプリはこのような経緯でスタートした大会だ。
3月に行われた九州大会に続く今回の関東大会には埼玉、神奈川、千葉から6社が参加した。
平成24年設立の若い会社ながら場数を踏んだ鳶を揃える
『株式会社アップステップ(埼玉)』
●昭和64年、そして平成元年生まれと歳が近い20代メンバーで参戦する
『合同会社アートビルダー(埼玉)』
●10代~20代前半という若いチーム構成で立ち向かう
『株式会社川西興業(神奈川)』
●新築、一般住宅、大規模修繕工事を含めて年間3000棟もの現場をこなす
『株式会社相模テック(神奈川)』
●くさび緊結式足場メーカーとしての威信をかけて今大会に挑む
『信和株式会社(埼玉)』
●鳶-1グランプリ主催者で前回九州大会では佐世保営業所の鳶が優勝を勝ち取った
『平尾化建株式会社プロジェクト部(千葉)』
早くから会場入りしていた参加者は家族の応援もあり和気あいあいとしたムード。しかし開会式が終わり競技開始の時間が近づくにつれ、緊張感が会場を包む。9時の合図と同時にトラックのロープが解かれ鳶-1グランプリがスタートした。
開始直後、相模テックチームが“奇襲”ともいえる作戦に出る。他のチームが資材の間配り、そしてジャッキベースの設置から始めたのに対し、相模テックチームはトラックから直接資材を渡しながら足場を組み上げてゆく。
「今回はトラックを3面横付けできるから1面ずつ組むのが早いと考えたんです」(小倉さん)
現場の状況に合わせもっとも効率のいいやり方を見つけるのも鳶の実力。他のチームと違う判断をした彼らの動きに審査員も注目する。開始1時間後には多くのチームが根がらみをつなぎ終え、支柱をつなげ始めた。
鳶-1グランプリでは事前に参加チームの元に一戸建ての図面が送られた。それを見て親方がどのようなやり方でどんな足場を組むか決める。足場に高さが出てくるにつれ、各チームの違いが見えてきた。
先行手摺りを多く使い足場の強度を高めてゆく信和チームと平尾化建チーム。1層ずつ階段を組むアートビルダーチームに対し、川西興業チームは1層目から3層目をつなげる用に階段を設置。アップステップチームは2層目から4層目をつなげるように階段を設置した。足場に各社の、そして親方の個性が見える。
午前中の天候は曇りで気温も低かったが、午後になると太陽が顔を出す。参加者は暑さとの戦いになった。しかし高く組み上がった足場の上で鳶たちは軽やかに動き回る。
「手摺りは…全部で4でOK!」
「いいから! 早く材料!」
あちこちから親方の指示が聞こえ、ハンマーの音が会場に響く。
「パパ、頑張って!」
普段父親の働く姿を見たことがない小さな子供たちの応援も自然と大きな声に。自分たちが一番に組み終える!という気迫からだろうか。終盤に差し掛かると各チームの動きが一層機敏に。
そして13時50分。大会終了時刻より1時間以上も早く相模テックチームが終了。ついでアートビルダーチーム、平尾化建チーム、アップステップチーム、信和チームが終了。最後に川西興業チームが作業を終え、全チームが予定時間内に足場を組み終えた。九州大会では同じ図面で足場を完成させたのが1チームだったことを考えると驚異的なスピードだ。
鳶-1グランプリでは作業スピード以外に足場の施工方法や作業内容、完成した足場の使いやすさや安全面などが審査対象に。中でも安全面は作業中、完成した足場ともに大きなウェイトを占める。審査員たちが足場に上り隅々までチェックするのを参加者は体を休めながら見守る。
第2回鳶-1グランプリin関東。優勝はアートビルダーチームに決まった。準優勝は信和チーム、3位はアップステップチーム。
優勝カップと賞金を受け取ったアートビルダーチームの伊藤さんは「優勝できてよかった。同じ図面でもこれだけやり方が違う。みなさんのやり方も真似させてもらいながら、もっといい足場を組めるようになっていきたい」とコメント。
審査委員長の高橋氏は「前半こそスピードに差が出ている気もしたが、時間に大差がなかったことに驚きました。安全面もどこもしっかりしていました。点数は僅差でした」と語った。
鳶たちが威信をかけて挑んだ鳶-1グランプリ。同じ図面でも完成した足場はまったく違うものに。しかしどの足場にも「すべての職人たちの仕事がはかどり、安全に作業できるように」という思いが詰まっている。この気持ちこそが、鳶の誇りなのだ。
第1回鳶−1GPin九州のレポートはこちらから!
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