職人が現場で腕を振る上でなくてはならないのが、鳶がつくる“足場”だ。歴史的な建造物の建設をも支えてきた足場も、時代とともに進化している
建設や土木の現場で必要となる足場。現在、多くの現場では“枠組足場”と“くさび式足場”と大きく2つの足場が使用され、その足場を設置する職人を鳶(足場鳶)と呼ぶ。
日本の建設現場において古くから用いられてきたのは、“丸太足場”と呼ばれる杉、ヒノキなどを利用したまっすぐな細い丸太を鉄線で締め上げて固定するものだった。1834年に刊行された葛飾北斎の富嶽百景には丸太足場で生き生きと働いている職人の描写が描かれている。
伊勢神宮で社殿を造り替えて神座を遷す「神宮式年遷宮(じんぐうしきねんせんぐう)」では今でも使用されている丸太足場ではあるが、1950年代になると、森林資源を保護する観点から木材の代わりとなる鋼管足場の開発・研究が本格化。1954年5月、東京大手町の施工現場で鉄パイプを組み合わせた“単管足場”が初めて使用され、同時期、鋼管製の基本部材を組み合わせ、積上げて構成する“枠組足場”も登場した。
現場で使用しやすいだけでなく安全性も高い“枠組足場”ではあったが、コストが高いことや部材が多くなるデメリットが嫌われ、1950年代後半になっても普及が進まなかった。“枠組足場”は造船所や土木の一部現場で使用されるにとどまったのだ。
そんなコストが高くなる“枠組足場”のデメリットを解消できるだけでなく、敷地が狭い木造家屋の現場などで対応できる足場として普及したのが“くさび式足場”だ。
1979年に登場した“くさび式足場”の大きな特徴は、一定間隔に結合部を備えた鋼管を建て地(支柱)とし、床付き布枠を作業床にするなど部材がユニット化されていること。また足場鳶がハンマー1本で組立ができる“くさび式足場”は、中層・低層(地上31mまで)の建物であれば人力で組み立てられる。そのため低コストだけでなく架設・撤収時間の低減が可能となった。いまや低層住宅工事用としてだけでなく、中層建設工事用の足場としても大きく普及している。
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