第2回 歳の離れた親方や社長から学ぶこと

まだ10代である中村さんにとって、現場で働く鳶の多くは人生の大先輩だ。怒られながらも必死に食らいつく中村さんは、彼らから仕事以外のことも学んでいる。

鳶職として働き始めてまもなく丸2年になる中村さん。現在所属する川島工業はふたつ目の会社になる。

 

「俺はまだ半人前だから、親方である大森さんと一緒に現場を回っています。親方と2人の時は俺が下から資材を渡すことが多いんですが、3人以上の現場になると親方が一番下について先輩は一番上、俺が真ん中という形になることが多いです。こうすると途中で資材の流れが止まることがない。親方が自分の仕事をしながら全体を見て流れをコントロールしているのでしょうね。敵わないなと思います」

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一緒に働く中村さんにとって親方はとうてい追いつけない存在。ベテランだから当たり前かもしれないが、足場を組むのもバラすのも早い仕事ぶりを見ると、凄いなと感じる。中村さんは最初足場に上がるのが怖かったし、今でも怖いと感じることもある。とくにバラすときは狭い場所でだんだん周りに支えがなくなるため、足場が揺れるたびに怖いと感じる。

 

「仲間を束ねている社長はとても面倒見のいい人だなって思っています。俺が今の会社に移った頃、本当に金がなかったんですよ。働いても給料をもらえるのは翌月。そんなとき、社長の奥さんが毎朝弁当を作ってくれたり、社長が夜飯を食わしてくれたり。俺のような若手の大変さもちゃんと見てくれたことは本当に感謝しています。辞めたいと思うことがあってもそのときのことを思い出すと義理を感じてここで続けようと思えるんです。そしてやっぱ辞めなくてよかったって」

 

少し照れながら中村さんは話すが、もちろん食事を奢ってもらったことに感謝しているだけではない。まだ10代。世間のことだって多くを知っているわけではない中村さんにとって、川島工業の川島社長は親代わりの存在でもあるに違いない。人との関係が気薄になったと言われることが多い現代でも、鳶の世界には人情が残っている。

 

「前に親方と俺ともう一人、3人だけで4000㎡くらいある現場に入ったんですよ。足場を組むだけで1カ月くらいかかったんですが、いつまでたっても終わりが見えなくて『いつまでかかるんだよ…』という思いが沸き上がってすごく辛かったんです。でも親方は黙って仕事をしていて、しかも動きがすごく早くて。この人、すげえって思いました」

 

今でも仕事を辞めたいと思うことはしょっちゅうある。でも会社に戻り親方や社長と話をするともう少し頑張ろうと思うそうだ。

 

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友達にも鳶の事を教える。

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