建設現場に設置される足場は多種多様。組み上げられる職人によって仕上がりは大きく異なる。職人ならではのこだわりこそが、なによりも大事な世界なのである。
建設業に携わっていない者にとって、マンションなどの外壁に設置される足場はすべて同じように見えてしまう。
しかし、外部・内部工事用、架構工事用、補修工事用など足場は用途により使い分けられている。
しかも足場は組立マニュアルが存在せず、現場を仕切る職人が建物や建設場所により、場に即した判断で足場を組んでいく。
簡単に言えば同じ建物・場所であっても鳶によって組み上げられる足場は全く違うものになるのだ。
建設業界で「足場は鳶の芸術作品」と言い表す人がいるというが、職人としては足場を組む際のこだわりを当然持っている。
そのこだわりは鳶それぞれで違うようだが、共通するのは自分以外の鳶がどのように足場を組んでいるかを気にすることだ。
アップステップで親方を務める阿部さんもそんな職人のひとりである。
「職業病なんでしょうね、トラックで現場に向かう運転中でも、街中にある足場はつい見いってしまいます(笑)」
鳶は組み上がった足場で実力が判断される厳しい世界。街中にはひとつとして同じ足場がないなか、他の職人が組んだ足場を気にするのは当然のことだろう。
「どんな現場にしろ、足場を組み上げたときは一番やりがいを感じますね」
過酷な状況のなか、危険と向き合いつつ作業を終えたあとの開放感が何物にも代えがたいと話す阿部さんにとって、自らが組む足場についてのこだわりを聞いてみた。
「美しさや使いやすさは当然ですが、自分にとって一番のこだわりは、やっぱりスピードでしょうか」
一瞬、答えになっていないと思わず問い直してしまったが、足場を組む際に重要なのはなにより手順だそうで、スムーズな手順をこなすにはかなりの経験が必要となる。
言ってみれば「一流の鳶」しかできない作業なのだ。
将来、独立を考えている阿部さんにとって、先を見据えた足場のこだわりこそが、なにより必要となるのである。
友達にも鳶の事を教える。