鳶になる以上、人よりも稼ぎたい。こう考えるのは自然なこと。では稼げる鳶になるためにはどうすればいいのか。坂野さんには明確なビジョンがあった。
親方になって2年。坂野さんは自らの経験を元に若い鳶の“怒りかた”には細心の注意を払っている。
「いつも怒鳴ってばかりでは、怒られる方として納得いかないこともあるでしょうから怒りかたには気をつかっています。それでも、かっとなって怒ってしまうことはあります。ただ、その後のフォローは忘れないように気をつけていますね」
これは鳶をはじめたころ、頭ごなしに怒られていた苦い記憶があるからだと話す。一方で若いころから憧れ目指している先輩親方の影響も大きいのだと続けてくれた。
「とにかく怒りかたが上手いんですよ。怒鳴られることもありましたが、仕事が終わってからそのことに対してのフォローがちゃんとありました。そういうところを真似していきたいですね」
その親方から言われ、とくにいまでも覚えている言葉があるという。
「仕事を始めて3年ほど経ったとき『やっと俺が頭の中にある(作業)時間に(仕事が)ついてこれたな』と言われたのです。鳶として一人前になったことを認められたのだと喜びました」
そんな鳶としての目標でもある先輩親方の姿などを見て育った坂野さんは、鳶に必要なものがみんなからの『信頼』と『尊敬』だと気づいた。
「とくに親方になって感じたのはまずみんなから尊敬される鳶にならないといけないこと。若い鳶の面倒は当然見ないといけませんが、ひとりにつきっきりだと他の子は面白くないですよね。そのあたりのバランスをうまくとりながら仕事をすることで、現場ではみんなから信頼されていくのではないでしょうか」
こう話してくれた坂野さんだが、信頼されることが稼げる鳶には必要なのだと続けた。自分が目指す鳶の姿は、稼ぐ鳶になることとリンクしていると考えているのだ。
「みんなから信頼を集め、こいつに任せておけば安心だと思ってもらえるようになれば、結果として大きな仕事をやれるようになる。自然に『稼げる鳶』になるのではないでしょうか。いままで働いてきて稼ぐ鳶は絶大な信頼と尊敬が必要なんだと思いましたし、そんな鳶になることが目標です」
友達にも鳶の事を教える。