足場の世界では綺麗に組めた足場こそ、使いやすい足場だと評価されるのだという。しかし“綺麗”が意味する内容は見た目だけのものではないようだ。
2002年、足場鳶を生業とすることを決心した浜本さん。以来、アップステップ所属の鳶として日々、作業にはげむ。仕事のやりがいを感じる瞬間を尋ねると、「綺麗に足場が組めたとき」だという。
しかし、足場を「綺麗に組む」とはどういう状態なのであろうか。
「綺麗に足場を組むというのは、1800(mmの資材)で組める箇所は全部使用し、あまり細かい資材を組み合わせずに架設することでしょうか」
浜本さんはこのように答えてくれた。細かく組まない、いわば材料をできるだけ少なく組み上げるかが美しさや早さとともに現場で評価が高い足場なのだという。
しかし、早さや美しさが足場を組む際に重視されることは理解できるものの、なぜ材料を少なく組むかことが求められるのだろうか。
その理由として、仮設物である足場はただ組み立てるだけでなく撤収することを考え組み上げなくてはならないことだ。同じ足場を組む場合、資材が多いとその分、撤去時間がかかってしまうのは当然のことである。
「綺麗に組み上げられたときとは逆に、納得いかなかった足場とは全体的にゆがんでいたり、レベルが狂っていたり、割り付けがあわないときですね」
そんな足場を組んでしまったときは反省しきりだと話す浜本さん。
だが、「足場とは工事現場に係わる職人がいかに使いやすく架設できるか」という鳶の信条を胸に焼き付けながら作業することで、失敗を繰り返さないように心がけている。
「一人前の鳶とは、綺麗に足場を組み上げる人。ただ、足場を組むのはひとりではできない仕事なので、若い子たちとのチームワークを重視することも必要ですね」
ここ10年、日曜以外は現場に出ている浜本さんにとって成功と失敗を繰り返しながら足場を組み上げてきた。
「ここはこうしろ」と若手の鳶に指摘するだけではなく、足場を綺麗に組み上げることで、鳶の哲学を示している。
友達にも鳶の事を教える。