――足場の架設工事は、組み上げた後に飛散防止の養生シートで足場全体を覆い、一区切りとなる。このシート張りは言わば最後の仕上げ、使用するのはシートと紐だけで、重い資材を運搬する必要はない。はっきり言って肉体的には一番楽な工程だろう。
・・・だからって、ここで手を抜くのは三流のやることだ。確かに仕事自体は楽だが、それは決して楽をしていいというわけではない。寧ろこの工程に一番気を張る職長さえいる。何故なら「シートを綺麗に張れているかどうか」はそのまま、「足場の外観が美しいかどうか」に直結してくるからだ。終わり良ければ全て良し・・・ではないが、いかに足場がしっかり組めていても、その周りを包むシートが汚かったりたるんでいたりするだけで一気に印象は悪くなる。自分の仕事に余計なところでケチをつけたくはない。だからこそ、シートの出来にこだわる職長は少なくない。
今日の写真は高層ビルへの足場架設工事、それがちょうど終了したところを写したものだ。隙間なくしっかりと張られたシートに覆われたビルは、まるで最初からそう言う建物であったかのようにそびえ立っている。ちなみに職長曰く、これでも出来は「まあまあ」らしい。常により美しく、より安全な足場を目指して。鳶の世界に完璧と言う言葉は存在しないのかもしれない。
(撮影:Hカメラマン)
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