鳶職人の仕事には「仮設工事」も含まれます。
それは足場など壁面に関係する工事だけでなく、建物全般にかかわります。
新築の棟上げは鳶と大工が共演するわかりやすい例です。
そんな鳶の仕事も時代とともに変化して、伝統的な技法は徐々に消えていく運命にあるようです。
今回はそのひとつ、「上屋工事」についてご紹介します。
屋根の工事に必須になる「上屋」とは
現役の若い鳶職人は、上屋とか、素屋根という言葉を仕事の中で聞くことは、ほとんどないかもしれません。
これらは 建物の改修工事を行う際、工事をしている建物を工事期間中の雨風から保護するために一時的にかける、仮の屋根のことなんです。
屋根そのものをかけ替えるときや、屋根をはじめとして建物全体の構造だけを残して新しい建物に再生する場合などにも利用され、「上屋工事」とか、「上屋をかける」「 素屋根をかける」と呼ばれたりもしました。
屋根そのものを撤去するときは、本体である住宅を保護するために、撤去される屋根の下に仮設の屋根をかけることで、建物本体を汚損から守って工事ができるようにしていたのだそうです。
元々は屋根工事の際に屋根材をそっくり外して葺きなおしたり、檜皮葺、こけら葺き、わらぶきなど、植物性の資材で葺かれた屋根を、屋根構造を変えて頑丈なものに葺き替える時などに使われていました。
古くは町鳶さんたちの間で伝えられてきた技術でした。
時代とともに移り変わる上屋の技術
木と紙の家と呼ばれた在来工法の日本建築の時代。
屋根は定期的に葺き替えや補修が必要だったり、台風、地震などの災で大規模修復が必要になるため、上屋工事は珍しくないものでした。
鳶職人の仕事を紹介するこちらの動画では、3分38秒あたりから、新旧の上屋工事の様子が紹介されています。
伝統的な上屋工事工事をする屋根の環境や材質によって、素材・工法が変わり、なかなかデリケートな技術だった様子がうかがえます。
昭和から平成へと時代が流れる中で、屋根の素材や構造は頑丈になり、建設工事の工法そのものも変わっていきました。
上屋の素材も丸太足場主流だった時代から、金属足場へ変わって行くにつれて、より頑丈に、簡単に設置できるものの開発が進んでいきました。
文化財保護に大活躍の上屋工事
姿を消しつつある伝統的上屋工事が今でも活躍している分野があります。それは、歴史的価値のある文化財修復現場です。
『文化財建造物保存技術協会』では、そんな文化財修復工事の様子を見ることができます。
最近では京都の西本願寺でも伝統的な丸太足場を利用した補修工事が実施されています。
中でも飛雲閣修復情報<屋根葺替工事 Vol.6>では、上屋が大活躍している様子が見られます。
一方で、大きな建物の場合は、もっと大規模な上屋を利用される方法も使われています。
こちらは名古屋城の再建工事の様子。上屋と言うよりほとんど体育館のような仮設建築の中で、再建工事が進められた様子が分かります。
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こちらの動画は、くみ上げた素屋根をクレーンで釣り上げて行う様子です。かつての伝統技法と比べるとスピードも強度もグンとアップしていますね。
時代とともに姿は変えても、上屋工事は今でも日本の建設工事に必須の技術として、確かに息づいていることがわかりますね。
友達にも鳶の事を教える。