第1回 「高いところが苦手…」なことの重要性

川西興業 栗田裕也

高所をさっそうと駆ける“現場の花形”鳶職。どれだけ高い場所でも平気な人たちが仕事に就くと思われがちだが、実はそうでもない。怖いと思うこともこの仕事には大切なことだという。

何もないまっさらな場所や立ち並ぶビルの壁を這うように足場を組み上げてゆく鳶職。くさび緊結式足場の高さは一般住宅でも10m近く、マンション改修工事などでは数十mの高さになることもざらだ。

高いところをひょいひょいと飛ぶように渡ってゆく姿に憧れ鳶職を志す人も多いと思うが、一方で鳶の社長や親方からはこんな言葉を聞くことも多い。
「高いところでも怖がらない鳶は逆に危ない」
過度な自信、恐怖心のなさは気の緩みに繋がり、思わぬ事故を引き起こしかねないという。

「もともとは土木関連の仕事をしていましたが、給料のよさに惹かれて鳶職になりました。でも土木と違い鳶は高い場所で仕事をしますよね。自分は高いところが苦手なんです…。転職するとき、果たして僕のような男に仕事が務まるか不安でした」

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川西興業の鳶職、栗田さんは鳶になった経緯をこのように話す。事実、鳶になりたての頃は現場に出るたびに「こんな場所、無理だ。僕にはできない」と思い続けていた。恐怖心に押しつぶされそうになる栗田さんを支えてくれたのは仲間だった。

「川西興業には友達から誘われて入りました。僕が現場でビビっているとき、友達が『大丈夫だ!』と言ってくれたのは支えになりましたし、一人じゃないと思えたことで恐怖でしかなかった現場もだんだん楽しいと思えるようになりました」

そんな栗田さんも鳶になって3年。新人扱いはとうに終わり、中堅として後輩とともに現場へと向かっている。しかし、高さに関してだけは新人の頃と変わらず苦手。「今でも高いところには極力いかないようにしています」と冗談ぽく笑う。

「僕が経験した現場は最高でも4層。それでも下から見るのと上に上がるのではまったく違いました。だからこそ安全対策はきちんと行うようにしています」

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最初に「恐怖心のない鳶は危ない」と言う言葉を紹介した。裏を返せば、怖いと思うことで安全対策をしっかり行うようになる。威勢のいい鳶という仕事だが、現在はどの現場でも安全確保が徹底されている時代。親綱をしっかり張り、安全帯を確実につける。基本を徹底することで、忙しい現場も円滑に回っていくのだろう。

友達にも鳶の事を教える。

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