第2回 顧客の期待以上の足場を仕上げる。

信和 三上浩一

全国各地を飛び回る橋梁鳶から、戸建を中心とした現在の会社に転職して10年目。同じ鳶でも仕事の内容が変わったわけだが、今の仕事に充実感を感じているようだ。

橋梁鳶をしている頃は、1年間家に帰れず、現場にずっと滞在することが珍しくなかった三上さん。今では毎日のように家族の顔を見て現場に通っている。そうした生活のリズムが前職と大きく違う点だ。

「それと、今は戸建の足場を組む仕事が多いので、工期が短いですよね。先が見えやすいから、ホッとするんです。コンクリート橋だと完成までに数年かかることも珍しくないので、終わりが見えにくくて…」

先が見えるほど「よし、もうすぐ終了だ」という気持ちになれる。だからそこまで頑張ろうと思える。しかし、いつ仕事が終わるのか分からない環境では、自分を追い込み気持ちを奮起させるのは難しい。

「だから工期が短いというのも、仕事を頑張れるモチベーションの一つになります」

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また三上さんは現在「施工開発部」という部署にも属している。信和はくさび緊結式足場の最大手メーカー。新製品に現場としての意見を役立てるため、三上さんは開発のサポート的役割も担当。これもまた、前職ではなかったことで、仕事のモチベーションの一つになっているのだろう。そんな三上さんが考える「一人前の鳶」とはどんな鳶だろうか。

「すべての面で高いスキルを持っていることじゃないですかね。それはお客様が依頼したもの以上、期待以上の足場を作れるというスキル」

ただ言われたように作るのではなく、依頼したほうが想像以上に満足できるような足場を作ること。それには相手の求めていること、より便利に使うために必要なことなどを観察し、それを実現できる技量も必要になる。

そのためには、やはり場数を踏むしかない。三上さんも、現場は日々勉強になるという。

「例えばある排水場の現場では初めて使う部材が必要だったのですが、その組み立てはとても勉強になりました」

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自分のスキルを上げるため、数多くの現場で考え、動いて、学んでいくことが出来る。そんな今の仕事を三上さんは気に入っているようだ。

「ただ、肉体的には橋の鳶の頃よりきついですね。特に夏場は暑くて。でも嫌なのはそれくらいかな」

家族と毎日一緒に暮らせて、勉強もできる。現在の職に夏場のきつさ以外の不満はなさそうな三上さんだった。

友達にも鳶の事を教える。

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