鳶という仕事へのやりがい、そして実力に応じて得られる高給。この二つが、21歳にして大規模現場の職長を務める工藤さんの原動力だ。だが、話を聞いていくうちに、彼にはもっと別の大きな力の源があることが見えてきた。
家族という大きな支え
現場帰りのトラック内。すっかり日も落ち、すれ違う車のライトだけを照明代わりにインタビューは続けられる。
次の質問は、工藤さんの休日の過ごし方についてだった。知っての通り、鳶は現場系の仕事でも特にキツい職種だが、それ以上にワカトビたちは同世代の若者と比べても非常にエネルギッシュだ。休日ともなると仕事の疲れなどどこへやら、全力で趣味に興じている人も少なくない。ところが、工藤さんから返ってきた答えは少し意外なものだった。
「家族と買い物っすかね。」
現在工藤さんは結婚しており、更には8か月になる長男に現在奥さんのお腹にいる子も含めると、二児の父なのである。年齢に似合わぬ堂々とした振る舞いや落ち着いた様子は、一家の大黒柱としての責任を感じ、日々仕事を真剣にこなしていくうちに身に付いたものなのかもしれない。
ちなみに、「自分かなりのイクメンっすよ(笑)」とのこと。平日は遅くまで仕事に取り組んでいて家族団欒に時間を割けない分、休日になると家族を連れて近くのレジャースポットに遊びに出かけたり、現在免許取得中の奥さんに代わり、日中お子さんの面倒を見たりと家族サービスに余念がない工藤さん。どうやら家族の前では、現場での厳しい親方といった雰囲気からは想像もつかない、アットホームな優しいパパっぷりを発揮しているようだ。
目の前の仕事に全力で取り組む。それは社会人としてあるべき姿ではあるが、現実として、毎日毎日途切れることなく与えられる役割を、常にモチベーションを切らさず続けていくのはなかなかに難しい。だが、それを工藤さんは「普通っすよ」と簡単に言ってしまう。彼の鳶という仕事に真面目に向き合い、いついかなる時も情熱を燃やして現場に立とうという姿勢。それを支えている存在の一つに、家で自分の帰りを待つ大切な家族がいるのではないか、そんな風に私には映った。
次回はいよいよインタビュー最終回。工藤和也という人間が「鳶」にかける思い、そのすべてを明らかにしていきたい。
レジャースポットにて家族3人揃っての一枚。ちなみにバイクに跨る男性は家族ではなく蝋人形とのこと(笑)
友達にも鳶の事を教える。