鳶の仕事はしんどい、だからみんなで乗り越える

青川さんの所属する営業所は現在6人。人数が少ない分、職人間の仲は良好だという。ヤード内の様子を少し見ただけでも、明るく和気あいあいとした雰囲気が伝わってきた。トラックの積み込みも、担当関係なく6人全員ですべてのトラックを片付けているそうだ。

第一回インタビュー記事はこちら!)

「鳶の仕事はやっぱりしんどいですからね。ぎすぎすしながらやるより、みんなでわいわい楽しくやった方がいいですよ。」

簡単に言ってのけるが、同じ会社内であっても、それぞれが譲れないプライドを胸に秘めている職人たちが、意見や考え方の相違でぶつかり合うことは珍しくない。
職人たちがいい関係を作れているのには、彼らを纏め上げる気安くて頼れる親方の存在があることは間違いないのだろう。

そんな彼も、今の鳶業界について思うところがあるという。それは、若い鳶の人材不足だ。
現在の若年層はとにかく辛い仕事を嫌がり、見習い期間を経て鳶として大成するよりも、コンビニバイトで安くともそこまで肉体的に負担なく働いた方が・・・と考える人が多いと感じるという。

「確かに身体的にも給料的にも最初はしんどいですよね。ある程度仕事が出来るようになれば稼げるようになるんですけど笑。」

それでも、彼は知り合いの若者に声をかけることはしないという。鳶という仕事が肉体的に辛く、向き不向きがある仕事であることは間違いない。そんな世界に甘いことを言って誘い込むのは、フェアではない。鳶をやるかどうかは、自分の意志で決めるべきだ。
そんな感情が、言葉の先々から見え隠れした。彼の優しさと、同時に彼の持つ鳶職という仕事へのプライドが垣間見える一幕だった。

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最後に一つ、尋ねてみた。「自分にとって、鳶とはどんなものであるのか」と。彼はこう答えた。

「飯を食うためにやらなきゃいけないことですね。しんどいことはしんどい、でもそこは割り切って、仲間たちと楽しくやりきる。」

鳶は甘い仕事ではない。だからこそ、気の置けない仲間とその困難を分かち合って乗り越える。下手に気取ることのない、素直で重みのある言葉。だが、それを口にする彼の表情は、これまで以上の笑顔であったように見えた。
どこまでも自然体で、力みすぎることなく、それでいてプロフェッショナルとしての意識は人一倍強いものがある・・・青川治正という職人は、ほかの職人とは一味違う、しかし不思議な魅力を持っていた。

将来のことはまったくわからない。知ってたら教えて欲しいくらいだ、と笑いながら語る青川さん。無論、筆者にもそんなことを知るすべはない。
が、きっとこの人は5年後も10年後もこんな風に笑いながら足場に関わっているのだろう。そう、思わせてくれる人物だった。

友達にも鳶の事を教える。

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