鳶職人の命を守ってくれる安全帯
ところで、「どんなタイプ」を使っています?
いよいよ、2019年2月から、フルハーネス安全帯が義務化されます。
これまでは、腰ベルト型安全帯も違法とはみなされなかったものがNGとなり、2019年7月からは、現行の胴ベルト式をはじめとしたフルハーネス以外のタイプの安全帯製造が禁止されます。
フルハーネス元年でもある、2019年、
「なぜ、いまフルハーネスなのか?」
「なぜ、胴ベルトではダメなのか?」
もういちど、振り返ってみましょう。
法改正が目指すのは「建設業者の死亡事故」の減少
フルハーネス元年を迎えることになった直接的なきっかけは、厚生労働省の取り組んできた、「第13次労働災害防止計画」です。
これは、厚生労働省が労働災害による死傷者を減少させる目的で行ってきた制度改革の一つ。
2018年度から2022年度までの期間を対象にして進められてきました。
中でも建設業者の中で最も死亡事故が多かった「墜落・転落事故」は重点施策として取り上げられました。
その中で安全帯の構造そのものにも死亡の原因に至る欠陥があることが判明して、より安全な安全帯への移行を段階的に行っていきましょうということになったわけです。
平成22年には、現行規格の安全帯は全て使用禁止となり、フルハーネスへ完全移行が終了する予定となっています。
胴ベルト式の安全帯に潜む「腹部打撲」という危険
「鉄骨鳶や高層建築の足場を組む鳶職人ならまだしも、電気工事士や個人住宅などの中低層建築を扱う職人たちまで、一斉にフルハーネスにする必要はあるのか?」
という疑問の声もあるようです。
確かに胴ベルトでも、転落そのものは防止できるはずじゃないか?とも思えますね。
この疑問については、医学的に「胴ベルトでは危険」という結論が出されているようです。
こちらの事例は胴ベルトで宙づりになって死亡した労災事故事例です。
墜落しなくても、転落した時の衝撃が胴ベルトのせいで内臓の圧迫をおこして、「腹部打撲」という症状で死亡する可能性があることがわかります。
腹部への強すぎる圧迫で呼吸ができなくなり低酸素症で死亡する事例や、内臓が破裂したり肋骨骨折するケースも報告されています。
助かった例もなくはないのでしょうが、フルハーネスと比較した時の救命率は低いということが判明したようです。
転落した場合はすぐに救急車を!
鳶職人の転落・墜落事故の後、労災事故にあることを恐れてすぐに救急搬送しなかったために、腹部打撲が原因で死亡してしまった事例も報告されています。
腹部打撲で怖いのは、内臓の異変が外から見たのでは全く分からないこと。
内臓は神経が通っていない「沈黙の臓器」といわれるものだと、致命的な損傷でも全く痛みがないせいで気づかれないことが少なくありません。
転落後、すぐに救急搬送して緊急手術をすれば助かったものを、「大して痛みがないし、頭は打たなかったから。」とそのまま作業をしているうちに、体調が急変して、病院についたときには肝臓破裂で手の施しようがなかった。という悲しい例もあるそうです。
胴ベルト式安全帯で転落して宙づりになったら、元気なようでも念のため救急搬送を徹底しておきましょう。
なんでもなければいいのです。放置して死亡事故になってしまったら取り返しがつきません。
それでは、今日もご安全に!
友達にも鳶の事を教える。