いろんな土地へ行くのが好き、毎日違う足場を組むのが楽しいという八鍬さん。そんな彼が考える「一人前の鳶」とはどんな姿なのか。また家族との時間を大切にするため上京したというが、休日は家族とどう過ごしているのか、聞いてみた。
戸建の仕事が多い八鍬さんの会社。毎回異なる足場を組むため、いつも新鮮な気持ちで仕事を楽しめる。しかし、そんな八鍬さんも年に1〜2棟、必ず苦労する現場があるという。
「場所は毎回違うのですが、ある工場系の現場ですね。特殊な構造をしているものばかりなので、まず仕様を考えるのが大変ですし『ここはこうして欲しい』という細かい要望もあります。さらにトラックが2台しか入らないとか、トラックは午前中しか置けないとか、そういう制約もあったりしますね」
できないことが多いほど燃える人はいるが、八鍬さんもきっとその一人だろう。「毎年悩むんですよね」などというその顔はとても明るい。そんな彼に、一人前の鳶とは?と聞いてみた。
「その日1日の流れが見える人だと思います。今日はここまで、明日はここからと全体の流れを読み、だから資材はこれをこれくらい、何人必要で、彼らの役割は……というのが見えるようになると、一人前と呼べるのかなと思います」
それを、先ほどのように数多い制約の中で、考えなければならないこともある。そうなると、やはり八鍬さんのように、逆境(と思えるようなもの)をむしろ楽しんでやろうという気持ちが大切になってくるのだろう。
さらに、そうした仕事に対峙した際は、モチベーションも大切な要素になるだろう。八鍬さんの場合は、給料はもちろんだが、家族がいること大きいという。
「子どもは上が4年生の息子、あとは1年生の娘と、年長組の娘がいます。息子はサッカーに夢中で休日は練習に出かけるためなかなか一緒に遊べませんが、娘2人とは時々ふらっとショッピングセンターに一緒に買い物へ出かけたりします」
家族のために仕事を選び、上京した八鍬さん。鳶として、家長として、充実した日々を送っているようだ。
友達にも鳶の事を教える。