鳶の親方には現場を仕切る能力が必要なことは理解できる。ただ、それだけでは務まらないのも親方なのである。
今から7年前、先輩の紹介で鳶に就いた平尾化建の岩間さん。年齢は24歳。鳶としてはやや遅めのスタートだった。
鳶について何も知らなかったが、当時は仕事を辞めたばかり。仕事があるなら、と軽い気持ちだったという。その後、鳶に必要な「玉掛け」「足場(足場の組立て等作業主任者)」「フォークリフト」「クレーン(小型)」といった資格・免許を相次いで取得。現在では親方を務めている。
「鳶を始める前はいろいろアルバイトをしていましたが、どれも長くは続きませんでした。この仕事も夏の暑いなかで作業をするたび、『もう辞めようかな』と頭によぎります。よく続いてますよね(笑)」
足場を組み立てる現場は、その規模が大きくなるほど係わる鳶や職人の人数も大きさに比例して多くなる。足場の組み立てを仕切る親方には、下につく鳶への指示だけでなく、建設作業員や職人などとの調整能力が求められる。これが一筋縄ではいかないケースも少なくない。
「足場を組み終わった段階で現場監督に確認を取るのですが、足場で作業をする職人からもっとこうして欲しいと要求が監督にくるケースがあります。場数をこなした監督であれば現場のことを考えて職人を説得してくれますが、まれに組み直しを要求されることがあるんですよ。こちらとしては注文に沿って組み上げてるんですけどね…」
簡単にいえば現場監督の力量ひとつで負担が大きくかかってしまうのだが、そういうケースがあるからこそ「またお願いしますね」と言われたときの喜びはひとしおなのだと岩間さんは笑顔で語った。
「まずは足場をキレイに速く組むことが重要。親方になってからはお客様のニーズにいかに応じられるか、要はサービス精神が鳶には重要だと感じるようになりました。ニーズに応じられないと、次がない世界なんですよ」
顧客に対しての“思いやり”を持つことが一人前の鳶の証であり、そうなるのが目標だと話す岩間さん。
将来の目標は独立して社長になるのではなく、親方として、またひとりの鳶として会社を大きくすることだと続けた彼を見て、鳶ならではの含蓄に溢れていると強く感じた。
インタビュー後半へ続く・・・
友達にも鳶の事を教える。